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夜の装いについての小事典:ルリ・落合

1960年代ファッション
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ここに紹介する「夜の装いについての小事典」は「婦人画報」1967年12月号18頁・19頁に掲載されたものです。煩雑になるので引用符号は付けていません。
今号は「夜の集まりに着るコートとドレス」を特集していて、その延長にこのコーナーが設けられていたと考えられます。
コーナー名のすぐ下にルリ・落合と表記されているので、彼女が文章を書いたか趣旨や大意を話したことは間違いありません。イラストは宮内裕。
これまでもルリ・落合のリード文をいくつか取り上げてきました。ここに紹介するコーナーと同じ号に掲載された落合自身による別の記事もあります。その紹介は下のカードをご参照ください。
夜の集まりに着るコートとドレス:ルリ・落合デザイン
ここに紹介する2点の画像とリード文は「婦人画報」1967年12月号14頁・15頁に特集された「夜の集まりに着るコートとドレス」です。ルリ・落合が衣装デザインをしています。今回のルリ・落合のリード文が1967年に存在したことに驚嘆します。

他のデザイナーや執筆者に比べて制作者側にいて、丁寧かつ的を射た説明をしています。このコーナーでもどういう文章によってモードの世界を展開するのか、楽しみです。
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夜の装いについての小事典:ルリ・落合

布地

光沢の強すぎるものは、けばけばしくて、品が悪いと敬遠されていたのは過去のお話。メタリック・トーンの流行は、夜のドレスやコートも例外なく、キラキラと光り輝くマテリアルが全盛という時代を迎えました。

「婦人画報」1967年12月号18頁

「婦人画報」1967年12月号18頁


●メタリックなマテリアルの第一にあげられるのは、ラメ入りのジャージーです。これは、ジャージー本来の、軽く肌ざわりがよく、しわにならないという数々の特徴を備えたまま、新しい表情で夜のマテリアルとして登場してきた人気ものです。まるでニットのような感じにつくられた厚地から、蟬の羽根のように、うすくてしなやかなものまでたくさん出そろっているのです。
ジャージに編みこまれた金糸や銀系のラメも、布地の表面全体がギラダラと光沢の強いものから、底に沈んだようにかすかにキラリと光るものまで、その中間もふくめてラメの光りもまたさまざまです。
「婦人画報」1967年12月号18頁

「婦人画報」1967年12月号18頁


●ピカピカのラッカークロースはもうおなじみになりましたが、光沢と柄の調子があえば夜の装いにも美しい効果を発揮する布地です。
●さらに、字宙時代を代表するように、冷たい金属的な光り放つ新しいマテリアルが、つぎつぎとつくられてゆきます。それは、従来の布地のもつ風合や暖かみを否定した、非情なメタリック・トーンで、布地や革の上に、ガラスや金属の特殊加工したものさえあります。
「婦人画報」1967年12月号18頁

「婦人画報」1967年12月号18頁


新しいメタリック・トーンとはおよそ正反対のクラシック調も、ロマンの香りをただよわせているのが、今年のもう一つの方向です。
●ふくれ織と呼ばれている、表面に凹凸模様を織り出した布地は、ヨーロッパではルネッサンス時代の衣裳にも使われていたもののようです。まるで西陣の帯地のように豪華なものもありますが、ふっくらとした風合にあきたらず、もっと現代のシャープな線の要求に答えて、このごろは、絹とウール、絹と化繊、ウールと化繊など、いろんな割合いの合繊のふくれ織がつくられています。
「婦人画報」1967年12月号18頁

「婦人画報」1967年12月号18頁


●エレガンスの代表のようなレースも、女の装いにはつきものです。特に、リバーレースやリボンレースは年ごとに技巧を加えて、盛りあげた豪華な花模様や、編みもののようなざっくりした面白さを、みせています。シフォンジョーゼットは、その軽やかさと透明度の美しさで、幾枚も重ねて使う光りと影が魅力的です。
●ピロードやシフォンベルベットは古風なロマンがいつまでも愛され、白いレース飾りでふちどった小公子ふうのドレスや、ジョルジュ・サンドのようにズボンをはいた女の装いが、流行線上にあらわれてきた今日、なくてはならない素材です。
●ファイユやサテンも、優雅さと品格で、この季節の夜にはやはり大切な布地といえるでしょう。
●そしてこのごろは、単一の布地にあきたらず、胸から上の部分はローンやジョーゼットのうすもので美しい肌を透かせ、そこにカットビーズや刺繡をほどこし、胸の下から裾まではビロードやコットンスエードのようなライニングのいらない布地でできたものが、一着のドレス用としてつくられている時代です。一つの服の中に、いろんな要素をいっぱいつめこんでおきたい欲ばりな現代人に、なんとびったりした布地ではありませんか。

キラキラの流行は、当然ゴールドラッシュを出現させました。そして銀色も。このほか夜の衣裳におきまりの白と黒、そして赤というはっきりとした色が目立ちます。その白は、金色のよく映えるアイボリー系統が圧倒的。そして、赤もやはり金の縁どりのよく似合う明るい朱系統の赤と、クラシックな深いロイヤル・レッド(王室の赤)の二つの傾向です。夜のドレスに幅をきかせる黒は、今年は特に”若い黒”を主張して、金や銀の縁どりでいっそういきいきとしています。

「婦人画報」1967年12月号18頁

「婦人画報」1967年12月号18頁


このほか依然としてカラフルな布地もたくさんありますが、特に美しくみえるのは紫などの古代色。落ついた季節の夜を装うのにふさわしい色だからでしょう。

デザイン

強烈でメカニックな布地、繊細で技巧的な布地。豪車な布地、ひと目で夜の雰囲気もっている布地なら、その上ゴタゴタと飾りたてるのは蛇足というもの。たとえば、強烈な布地なら分量を少なくしてミニ・ドレス大いに結構でしょう。これと反対に、プレーンな布地なら貧相にならない注意が必要です。オースリッチの羽根でふわふわと飾りたてたりカットビーズでキラキラさせるのも一つの手段です。そして、薄く軽い布地なら分量を多く、厚地の張りの強いものなら線の美しさをいかして、少量を効果的に使うのが常識のようです。

「婦人画報」1967年12月号19頁

「婦人画報」1967年12月号19頁


シルエットは、ハイウエストかローウエストの二つのうちの一つ。中迩半端は、いまのモードの気分からはずれます。
衿もとは、明けるなら徹底させましょう。いまは強烈な布地が多いのですから、まず顔に近づけてみて、強すぎるようならひき離しましょう。優雅な布地なら、やさしく首をつつんで顔に近づける工夫もよいでしょう。
「婦人画報」1967年12月号19頁

「婦人画報」1967年12月号19頁


ゴールドラッシュといっても、金色の布地をそのまま着るのはどうも強すぎて似合わない、とおっしゃる方は、別の布地に金色の縁をとるとか、金色のコードをつけるとか工夫してみてはいかが。これならきっとお似合いになるはずです。
「婦人画報」1967年12月号19頁

「婦人画報」1967年12月号19頁

コート

毛皮のコート、毛皮のライニングをつけたコートは、いいはずですが、このぜいたくさはどなたにもおすすめできるものではありませんし、日本の冬はそれほどの寒さでもありません。そこで、一般的には、絹、ウール、交織などで充分。絹や交織なら厚手の張りのある生地で美しいシルエットがつくれます。ウールなら、表面のなめらかな光沢の美しいものがドレッシーです。デザインは、できるだけプレーンにすること 。それはどのドレスの上にも着られるし、小さな毛皮の衿まきも上手に使えるからです。色は白と黒のほかにベージュ。やはりなんの上にも似合うからです。

「婦人画報」1967年12月号19頁

「婦人画報」1967年12月号19頁

手袋

夜の装いには必需品です。まず、きまりものは白と黒。どのドレスにも抵抗なくとけこむ色はベージュです。材質は、正式な場合はドレスと共地とか、サテンやレースなどの布製もあります。一般にはスエードやしなやかな表革。ヒフの一部のようにぴったりと仕立てられたものが上等。手袋の長さは、ドレスの袖丈にあわせるのですから、肘上、中長、短いものなどとり揃えておきたいもの。

アクセサリーズ

メタリックな布地の流行から、いまはドレス全体が光り輝いているのですから、その上アクセサリーは不用なくらいです。でも、おつけになりたい方は、思いきりジャラジャラとたくさん。ただし、プレーンなドレスにかぎります。

「婦人画報」1967年12月号19頁

「婦人画報」1967年12月号19頁


金属製のしのはゴールドとホワイトのものをそれぞれ統一して飾ること。それに、いまは小さくてもほんものを身につける時代になりました。

バッグ

ますます小型に、きゃしゃになりました。ものを入れる実用よりも夢をさそう装飾品になってきました。

パンプスもサンダルも、きゃしゃなつくりが必要です。ドレスにあわせて、金色や銀色の靴が用いられラメ入りのストッキングも、現代の夜の装いには雰囲気もひきたてるものです。

「婦人画報」1967年12月号19頁

「婦人画報」1967年12月号19頁

リード文批評

本文を丸ごとリード文として、以下に全体的な感想だけ述べます。
いつもは制作者の立場に寄り添ったリード文の多いルリ落合ですが、今回は完全に着る人となって、活き活きした文章を書いています。活き活きしているというのはコーディネートの戦略がはっきりしているということです。
昔も今もファッション雑誌や女性雑誌はとかくコーディネート戦略を謳っているように思えます。しかし、よく読むと「雰囲気」をコーディネートしているだけで、組み合わせの「現実性」を説明していません。
これに対して今回のルリ落合の文章ははっきりと現実性を示しています。
たとえばコートの箇所では次のように述べていました。

毛皮のコート、毛皮のライニングをつけたコートは、いいはずですが、このぜいたくさはどなたにもおすすめできるものではありませんし、日本の冬はそれほどの寒さでもありません。

ふつう、商品を売り付けるとき、着用者(消費者)の状況を度外視した説明で押し切る姿勢がよくみられます。でも引用箇所は、日本の寒さがヨーロッパに比べて微々たるものだから闇雲に欧州の高額なコートを真似て着る必要はない、と明言しています。
高度な工業社会に入っていた欧州も日本も同じように捉えるならば、高額なコートを着れるような態度やマナーや教養を身につけろと消費者に訴えると効果が出ます(コンプレックス販売)。しかし、気候という当たり前の前提を落合は忘れていません。
その上で落合は次のように戦略を明示します。

そこで、一般的には、絹、ウール、交織などで充分。絹や交織なら厚手の張りのある生地で美しいシルエットがつくれます。

毛皮じゃなくてもいい、絹やウールやそれら交織でOKと。詳しい戦略がさらに続くのもナイス。
着こなしやコーディネートのコツとして勉強になった点をいくつか挙げておきます。

  • ドレスの袖丈と手袋の長さを相対的に考えている点。
  • 夜の衣装の話なので靴は華奢なものが良いと指摘した点。

ラメ入りストッキングやラメ入り生地など、とかく「ラメ入り」という言葉が多く、1960年代のスペースエイジ(宇宙時代)の一抹を垣間見れます。当時はおしゃれの一環として当たり前のように身につけていた女性たちが多かったんでしょうね。
私はきっとラメ入りフェチなのでしょう、ませたガキとして育った私としてはラメ入りと聞くだけで萌えるんですが(とくにストッキング)、同時代に生まれなくて良かったなと思いました。生まれていたら現実以上に女性を追いかけまわしたでしょう(笑)。

最後に

日本よりもヨーロッパの方が寒いので、綿花普及のあり方には東アジアとヨーロッパで違いが出ました。
その点を述べた記事もご参照ください。
中世の東アジアと西ヨーロッパを綿花調達の方法から比較する
中世における東アジアと欧州のにみられた棉花調達方法の違いを述べています。15世紀まで絹と麻しか使われなかった日本で16世紀に綿が普及しました。17世紀以降ヨーロッパでも綿が普及しました。絹・麻・毛との比較から近代化における綿の意義を考えます。

この記事には「Fahion report from Europe: 北欧のファー・ファッション」と題されたエッセイの一部も載せています。
こういう特集を組まれると、つい≪毛皮コートを買わなければならない≫と当時の日本人は思ったのだと感じます。エッセイの著者は、ヨーロッパでは毛皮は贅沢品ではなく必備品だ述べているだけではありますが。
1960年代ファッション
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この記事を書いた人
もで

いろんなファッション歴史の本を読んで何も学べなかった残念なファッション歴史家。パンチのあるファッションの世界史をまとめようと思いながら早20年。2018年問題で仕事が激減したいま、どなたでもモチベーションや頑張るきっかけをください。

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