ピエール・バルマン:講演会で堪能な英語を駆使してモード美学を講義

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ピエール・バルマン

ピエール・バルマン(Pierre Balmain)は1914年にスイス国境に近いピレネー山麓(フランス側)サン・ジャン・ド・モーリエンヌに生まれたファッション・デザイナーです。
父は紳士服業、母は婦人服のブティックを経営。


1950年代のパリのオート・クチュール界の中心的デザイナーの一人。パリに衣装店を経営しました。

経歴

建築学を学ぶためにパリの国立美術大学に入りましたが、人形の衣装作りに熱中した少年時代からのデザイナー志望を捨てられず、コンコルド広場のデザインにインスピレーションを受けモード界への転向を希望します。
エドワード・モリヌーのもとに持ちこんだデザイン画が高い評価を受け、リュシアン・ルロンの店に入りモデリストとして働きました。
第2次世界大戦で招集を受け、休戦後は母のブティックを手伝います。ルロンからドイツ占領下のパリに呼び戻され、新入りのクリスチャン・ディオールとともに同店で再び働きました。
この頃の状況をファッション・デザイナー杉野芳子は次のように記しています。

モリヌーにその才を認められたのが、この道に入るそももの発端となっています。1941年の第2次大戦のぼっ発の頃にはルシアシ・ルロンの店に入り、ディオールと共にこの店で働いていました。ですからディオールとは同僚だったわけで、この交遊はいまだに続いています。バルマン氏はディオール氏より9つ年下の41才の働きざかり、ジャック・ファット亡きあとは、バルマン氏一人がディオール氏の好敵手としてお互いに腕を競い合つています。
杉野芳子「パリの最高デザイナー ピエール・バルマンという人」『ドレスメーキングースタイルと洋裁ー』通算56号、1955年11月号、87頁。

創業

1945年の夏に母の援助を受け、パリのフランソワ・プルミエ通りにアパートの一室を借りて、自分のメゾンを開店。
同1945年秋の初展示では、なだらかな肩、ウェストを絞ったフルスカートのゲピエルックのドレスや、ブロンド色のサテンに黒玉石で縫取りした美しい夜のブラウスなどを発表しました。
翌1946年の春には新鮮な「労働着ルック」のブラウスなどを発表。画家クリスチャン・ベラールが彼のために、貴婦人・上流階級のマダム・有名女優などを次々に紹介し、ピエール・バルマンは当初から「グランド・ダーム」のクチュリエとなることができました。
その傍ら、1950年代から1970年代にかけて、映画衣装や演劇衣装のデザインも手がけています。
ブロードウェイ・シアトルでのソフィア・ローレン出演「求むハズ」、ブリジット・バルドー主演の映画「素直な悪女」「殿方ご免遊ばせ」など。

ピエール・バルマン「オリアネ」絹、ガラス、貝。1954・55秋冬コレクション via House of Balmain | “Oriane” | French | The Met


若手ファッション・デザイナーの競技会でカール・ラガーフェルドが優勝したのを見て、1954年に彼をバルマン店へ雇用。また、マルギット・ブランド(Margit Brandt)は1960年代初頭に若手デザイナーとしてバルマンと働きました。

特徴

理論家でもあるピエール・バルマンは「ヘラルド・トリビューン」紙主催の講演会で、堪能な英語を駆使してモード美学の講義をしたのは有名です。
オート・クチュール組合付属学校で服飾史を担当しました。ラジオやテレビでの講演も多いです。

作風

彼の作風は優雅です。
世界中の上流階級の女性に人気がありました。1957年に発表した香水「ジョリ・マダム」の成功後、同名のコレクションを冠した作品が名高いです。

香水ジョリー・マダム ピエール・バルマン Jlie Madame. via VOGUE Paris, No536, Mai 1973, p2.


パリ・オート・クチュールの黄金時代といわれる1950年代に、ピエール・バルマンはクリストバル・バレンシアガ、クリスチャン・ディオールと並んで「ビッグ・スリー」と呼ばれました。
1960年代にも優雅で伝統的な衣装を貫きましたが、1970年代になると「ジョリー・マドモワゼル」へと変更していきました。

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この記事を書いた人

いろんなファッション歴史の本を読んで何も学べなかった残念なファッション歴史家。パンチのあるファッションの世界史をまとめようと思いながら早20年。2018年問題で仕事が激減したいま、どなたでもモチベーションや頑張るきっかけをください。

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