オーセンティック(authentic)とは、正統の、正格の、本物の、確実な、真正の、といった意味を示す形容詞です。
ファッション用語としてオーセンティックとは伝統的なものとして使われるか、本物志向という意味で使われます。
オーセンティックの類義語にはtraditional(トラディショナル、伝統的な)、authodox(オーソドックス、認知された)、conservative(コンサバティヴ、保守的な)などがあります。
オーセンティックは、その意味からして衣服だけでなく衣装全体の雰囲気や衣服への感覚を示します。
具体的には、
- アダルトを対象とした保守的な感覚
- 高級イメージ
- 伝統的でクラシックなファッション
- 衣服のラインを崩さずにきちんと着る(正確な着想態度や衣服)
などを意味します。
オーセンティックの基準
注意すべきは、新たな衣装が定着したとき、後代にオーセンティックと認定されることがある点。
つまり、同時代の評価が低くても後に正統派と認められる場合があり、その時、オーセンティックであると認められることがあります。
見方を変えれば、オーセンティックと呼ばれる衣装が単に一代前の流行に過ぎない場合もあるわけです。
オーセンティックな衣服としては、
- 英国紳士服に代表されるウィンザー風紳士服(ウィンザー・ルック)
- ブリティッシュ・トラッド、またはリアル・スーツ
- 保守的でエレガントな既製スーツやドレス
- 昔からある典型的な青のジーンズ(ブルー・デニムのジーンズ)
など。
他にもオーセンティックな衣服やアイテムとして、上質の天然素材のスーツ、バーバリーのコート、カシミアのツイン・セット、タータンのスカート、チャーチの靴などが挙げられます。
さらに、ポロや乗馬、狩りのコスチュームなどもオーセンティックなスタイルの基本でした。
いずれにせよ、ヨーロッパの伝統は民俗衣装に由来し民族衣装として近代に再編成されているので、18世紀・19世紀に確立された衣装をオーセンティックと呼びます。
中国や日本のように外在的に衣装文化が発生した地域は、おおむね1910年代から過去の衣装にヨーロッパ的要素を採り入れ始めたため、20世紀前半の衣装をオーセンティックといい、19世紀までの衣装は過去の服(歴史服)、または民俗衣装と記します。
フランスでオーセンティックの見直しが図られた1980年代
フランスでオーセンティックの見直しが図られた1980年代、B.C.B.G.(ベーセーベージェー)といわれる両家のお坊ちゃまやお嬢様ファッションが注目されました。
『B.C.B.G.のためのガイド・ブック』という本がパリで出版され、ファッションをはじめ、家柄、育ち、学校、結婚、職業からバカンスや教養、スポーツに至るまで細則が定められていました。規則に合うのが本物のB.C.B.G.でオーセンティックというわけです。
1980年代以降のオーセンティックなファッションといえば、イギリス流のスローン・レンジャー(ダイアナ妃予備軍)がオーセンティックに挙げられます。
関連リンク
- Authentic antique 1880s garnet silk bustle back bodice. – The Vintage Village – オーセンティックな1880年代のアンティーク衣料。絹の後部バッスルのボディス(胴着)。
- Prince William – A Suit That Fits – ケンブリッジ公爵ウィリアム王子のフォーマル・ウェアを場面ごとに紹介。
- Black Tie Guide | History: Late Victorian – ヴィクトリア朝後期のドレス、コート、ウェスト・コート、シャツ・カラーなどのイラスト入り解説。
- European Heritage Library – European history, cultures, historical memory, and European and immigrant identities – ヨーロッパ諸地域の伝統衣装。膨大な資料で紹介。説明・コメントは少ない。
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