近代のポール・ポワレから現代のフセイン・チャラヤンまで、ファッションの歴史で最も影響力が強い50人のデザイナーを紹介した本です。
近年のモード界のデザイナーを知るにはこの1冊を強く勧めます(他の本は不要です)。
本書の内容
各デザイナーの作品が当時なぜ傑作となったか、現代のファッション・デザイナーたちにどんな影響を与えたか。この観点から50名のデザイナーたちの代表作を紹介しています。
デザイナーごとに見開き2ページで構成され、上段に簡潔な説明があり、中段にデザイナー略伝があります。
さらに中段の上下には「影響を受けた人物・事」「影響を受けた人物」も簡単に紹介されているので、デザイナー関係が分かりやすいです。下段にはそのデザイナーのファッション史に与えた影響をさらにテーマに分けて説明しています。
読む角度がいくつもあり、各ページに大小の写真が数点挿入されていて、視覚的にも分かりやすいです。このような入れ子状の歴史書は珍しく、本でありながらインターネットをしているような具合で楽しめます。
クレージュを例に
たとえば、アンドレ・クレージュですと、上段には、オート・クチュールに宇宙時代をもたらし、女性、社会、文化の役割変化に対応できる服制作(機能的側面の強調)を行なったと、簡潔に説明されています。
中段はクレージュの年表です。
その上段には「影響を受けた人物・事」が取りあげられています。エドワード・モリヌー、クリストバル・バレンシアガ、エミリオ・プッチ、ココ・シャネル、ピエール・バルマン、クリスチャン・ディオール、現代建築・土木工学から、クレージュがどのような影響を受けたのかを簡潔に述べています。
下段には「影響を受けた人物」が取りあげられています。エマニュエル・ウンガロ、クロード・モンタナ、ミウッチャ・プラダ、ルディ・ガーンライヒ、ニコラ・ジェスキエール、イヴ・サンローラン、マーク・ジェイコブスへ、クレージュがどのような影響を与えたのかを簡潔に述べています(128・129頁)。
また、「影響を受けた人物」に書ききれないデザイナーもいます。
たとえばジル・サンダーの所では、彼女が「影響を受けた人物・事」としてアンドレ・クレージュが出てきます。「クリーンで宇宙的なデザインで知られており、サンダー同様、装飾は必要最小限にとどめるべきであるという主義の持ち主」(144頁)とされています。ジル・サンダーにクレージュを探せという風に本書を読めば、無限に装飾の楽しみが増しますね。
なお、INTO THE FASHION: INSPIRATION André Courrèges… Moschino SS//2013では、感化と窃盗の線引きが難しいと述べて、アンドレ・クレージュの作品から感化された例として2013年春夏のウンガロのコレクションが紹介されています。
感化、模倣、剽窃は確かに区別しがたいのですが、両者の作品を見比べた時、クレージュにあってウンガロにないものといえば活動性でしょうか。
まず、クレージュはハイヒールの靴を嫌い、平底のブーツを推奨しました。その代表がゴーゴー・ブーツです。次に、クレージュ作品のモデルはだいたい短髪ですが、ウンガロのモデルは長髪です。
ちなみに、ミニといってもクレージュは膝頭を見せた点が破壊的で、ウンガロの見せるようなマイクロミニは、スカート丈の上下の次元であって、本質的なものではなく単なる流行や個人差に区分されるます。
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ノエル・パロモ・ロヴィンスキー『もっとも影響力を持つ50人のファッションデザイナー』朝日真監修、グラフィック社、2012年
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