ココ・シャネルの星座 / 海野弘
ココ・シャネルの星座 : 本書は1920年代パリでのガブリエル・シャネルの交流を捉えた伝記です。雑誌「マリ・クレール」の連載をまとめたものです。
当時のパリではパブロ・ピカソ、ジャン・コクトー、ミシア・セール、ルキノ・ヴィスコンティたち芸術家が活躍していました。本書は選ばれた12人の芸術家たちから見たシャネルの評伝です。ですからシャネルの評伝であると同時に12人の芸術家たちの評伝伴なっています。
著者の海野弘は1920年代を好む評論家で、その時代の都市論や芸術論を精力的に執筆してきました。著者はその時代の面白さや彼女の周囲にいた人物たちに焦点を当てて、合わせ鏡のようにシャネルを描きたかったと述べています(同書258頁)。出版までの10年間をかけて調べてきたアートとファッションに関する知識をシャネルに集中させるように本書は書かれました。したがって、シャネルについても12人の芸術家についても詳しく書かれていて、ファッション史にとして読めたり文化史・芸術史と読めたり、中々面白いです。
もちろん、あくまでもシャネルの生涯にも注目しているので、内容が1920年代に限定されている訳ではありません。1930年代をエルザ・スキャパレリと絡ませたり、1940年代・1950年代のシャネルをセシル・ビートンという写真家を通じてクリスチャン・ディオールと対峙させたり、著者らしく対比による新しい視座を提供してくれます。シャネルはディオールのニュー・ルックがよほど嫌いだったようです。また、シャネルが復帰する直前にビートンはパリのシャネルの店を尋ねますが、その荒れ果てた店内に絶句したエピソードも挿入されています。
まぁ、ディオールのデザインは褒めようが無いので、ニュールックをファッション史に載せるくらいしか方法がありません。弟子のイヴ・サン・ローランやピエール・カルダンらの知名度ゆえにディオールを書かなければ仕方が無いというのがモード史にディオールが登場する本意といったところでしょう。
それはともかく、著者が選んだ12人と叙述の角度を目次から紹介します。
目次
- ガブリエル・コレット : ベル・エポックのパリ
- ポール・ポワレ : ファッションの世界へ
- ミシア・セール : 芸術サロンへの招待
- セルジュ・ディアギレフ : ロシアの誘惑
- パブロ・ピカソ : ボヘミアンと上流社会
- イーゴル・ストラヴィンスキー : 春の祭典
- ジャン・コクトー : オルフェの衣裳
- ピエール・ルヴェルディ : 詩人の恋
- ポール・イリブ : モードと政治と
- エルザ・スキャパレリ : 戦争とファッション
- セシル・ビートン : 女王の帰還
- ルキノ・ヴィスコンティ : ベニスに死す
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海野弘「ココ・シャネルの星座」中央公論新社 1989 Kindle版
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