本書は、縞模様(ストライプ)の服装に見られる昔と今を述べたものです。
ヨーロッパ中世において縞模様の衣服は、売春婦、死刑執行人、旅芸人たちに限られていました。現代では大胆な印象を与えますが、縞模様は異端や排除の対象にはなりません。
著者の好奇心は、現代の大胆さという印象と、「中世全般にわたって縞模様が引きおこしてきたスキャンダルとのあいだに絆を見つけたい」(8頁)という誘惑にあります。
本書の内容
本書によると、12世紀・13世紀以降、縞模様の衣服を否定的に、軽蔑的に、悪魔的なものとして扱う文献は豊富に残っているそうです。
また、旧約聖書の一つ『レビ記』には第19章19節には《2種で織った衣服を身につけてはならない」と記されていて、《動物繊維(毛)と植物繊維(麻)を混ぜてはいけない》と解釈してきたキリスト教の歴史において、中世にだけは《2色の服を着てはいけない》という特異な解釈がなされました。
ここに著者は中世人の視覚が重層性を持っていたことを見出します。ストライプは重層性を無効にする単なる面を提示するため、忌避されてのではないかと。
中世人の視覚を想像し、本書は
- 「縞模様の衣装をつけた悪魔 : 13~16世紀」(第1章)
- 「横縞から縦縞へ、そして逆転 : 16~19世紀」(第2章)
- 「現代の縞模様 : 19~20世紀」(第3章)
著者はフランスの古文書学校を卒業し、紋章、印璽、メダルなどの図像表現を心性史的観点から研究してきましたが、後に動植物の歴史、人間と色彩の関係史へと研究領域を広げてきました。
それを反映して本書では、イコンや絵画を参照した分析やシマウマ(縞馬)に言及した叙述など多岐にわたる縞を楽しむことができます。
ミシェル パストゥロー『縞模様の歴史―悪魔の布―』松村剛・松村恵理訳、白水社、2004年
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