Unseen Vogue
Unseen Vogue は雑誌「VOGUE」の未発表写真を集めたもので、語られなかった多くの物語が結集しています。
British Vogueに保管されている150万枚の画像から、今までに見たことのない(Unseenの)300枚強の写真が選ばれています。
巻末に人名索引あり。
収録された主な写真家は、
- セシル・ビートン
- ホルスト
- ノーマン・パーキンソン
- リー・ミラー
- デヴィッド・ベイリー
- アーヴィング・ペン
- パトリック・デマルシェリエ
- ブルース・ウェーバー
- ハーブ・リッツ
- スティーヴン・マイゼル
- ユルゲン・テラー
- マリオ・テスティーノ
ほか。
文献 Robin Derrick and Robin Muir, ed., Unseen Vogue: the Secret History of Fashion Photography, Little, Brown, 2004
内容
収録写真は、単純にヴォーグ用に撮影された場面に留まらず、構想から刊行までを通り抜けた、いわば作業迷路を証明するような写真も多く含んでいます。
たとえば、国際的に有名な多くの写真家の初期作品、忘れられた巨匠写真家による偉大な写真、それに議論の余地があり掲載を却下された写真、などです。
冒頭には1920年代後半の写真がありますが、多くは1970年代以降のものです。
本書の強みは、何といっても撮影状況を詳しく説明している点で、掲載経緯・未掲載経緯がよくわかります。
もちろん、フォトグラファー(撮影者)、ファッション・デザイナー(衣服設計師)、モデルに関する説明もありますが、これも編者たちの観点が盛り込まれているので、秘話として読むことができます。
たとえばこの写真です。
撮影者はバート・スターン(Bert Stern)で、アンドレ・クレージュ(André Courrèges)制作の衣服で、1967年のパリ・コレクションで発表されたものを写しています。
この写真は、最初にVogueアメリカ版で公表され、同じパリ・コレを扱ったイギリス版では掲載されませんでした。
本書の一目惚れ
私の一目惚れを下に紹介していきます。
1枚に絞りたいのですが、収録された写真が多いので、浮気心に揺れながら5枚。
「新しい事は靴の中」という艶めかしい題名の付された写真。アメリカの写真家クリフォード・コフィン(CLIFFORD COFFIN)の1946年の作品です。
コフィンは10年以上にわたり「ヴォーグ」誌に作品を提供し、ファッション・モデルの一世代を育てました。
たとえば、ウェンダ・ロジャーソン(Wenda Rogerson、後にWenda Parkinson)、バーバラ・ゴエーラン(Barbara Goalen)、スージー・パーカー(Suzy Parker)、エルザ・マルティネッリ (Elsa Martinelli)たちです。特に、エルザ・マルティネッリとはパリで一緒に仕事をしました。
次の写真は2枚組で「新しい事は靴の中」を地でいった構成になっています。
いずれもアンソニー・デニー(ANTHONY DENNEY)の作品です。
彼は室内家具の写真家で室内設計師でもあり、桃と赤の大胆な配合の先駆者でした。「ヴォーグ」誌では主に静物と装飾品の写真を多く撮影しています。
次はページも時代も飛んで1970年代です。
この写真は、撮影がパトリック・ハント(ATRICK HUNT)、モデルがマウディ・ジェイムス(Maudie James)で、表紙候補になりました。
整髪はセリーヌ・アット・レオナード(Celine at Leonard)、化粧はバーバラ・デイリー(Barbara Daly)。
この写真はまた、リズ・ティルベリス(Liz Tilberis/後の「ヴォーグ」誌主編集者)のファッション業界デビューを飾るもので、この時、ペネロペ・ツリー(Penelope Tree)も同席していました。
ティルベリスは後に、写真家のデビッド・ベイリー(David Bailey)に「彼女たちは1960年代後半の最高に非凡なスーパーモデル」だと伝えています。
最後に旗袍です。
これはセシル・ビートン(Cecil Beaton)が自身で集めた旗袍 の一つをティナ・ルッツ(Tina Lutz)に着せたもので、ビートンによるシノワズリー(Chinoiserie by Beaton)となっています。
その後、このようなビートンの色の多様性はイギリス「ヴォーグ」誌で見られることはありませんでした。
文献 Robin Derrick and Robin Muir, ed., Unseen Vogue: the Secret History of Fashion Photography, Little, Brown, 2004
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