ノーマン・ノレル(Norman Norell)は、1900年にアメリカのインディアナ州に生まれたファッション・デザイナーです。
コティ・アメリカ・ファッション批評家賞を2回、ニーマン・マーカス賞を1回受賞しています。
クレア・マッカーデルと同様、戦時中のアメリカにいち早くファッションの息吹を復活させたデザイナーでアメリカン・スタイルを確立しました。気まぐれな流行に左右されない格調の高い服作りを進めたことで「アメリカのバレンシアガ」とよばれました。
経歴
ノレルの父親は男性服専門の雑貨店を経営していました。
これが影響してノレルはデザイン学や美学に目覚めました。彼はより洗練されたシルエットとメンズ・ウェアの要素を好みました。1919年にニューヨークに出て、パーソンズ・スクール・オブ・デザインで絵を勉強し、ブルックリンのプラット・インスティテュートでコスチューム・デザインを学びました。
映画衣装デザイナー
卒業後にパラマウント映画会社に勤務し、ルドルフ・ヴァレンチノやグロリア・スワンソンら無声映画の大御所たちの映画衣装・舞台衣装のデザインを担当しました。
しばらくしてパラマウント社はハリウッドに移転します。
ノーマンはニューヨークに留まってハッティ・カーネギー(Hattie Carnegie)の店舗などで勤め、多くの有力なクライアントを抱えた衣装デザイナーとなりました。
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ノーマン・ノレル サブウェイ ウール 1942年 ミセス・セオドア・B・リンゼイ(1973年): Subway, Norman Norell, wool. Gift of Mrs. Theodore B. Lindsey, 1973. via Norman Norell | “Subway” | American | The Met
第2次世界大戦によってアメリカからフランスのファッションが切り離されると、ノレルの作品はすばやく隙間を埋めました。
繊維の配給に悩まされなかったノレルは好きな1920年代を思い起こさせるスリムなドロップ・ウエストのシュミーズ・ドレスをデザインしました。
トレイナ・ノレルとノーマン・ノレル
1941年にアンソニー・トレイナ(Anthony Traina)と共同経営で「トレイナ・ノレル」社を設立。
1960年にトレイナが死亡してノレルは同社を買収し「ノーマン・ノレル」として経営を続けました。
晩年、ノーマン・ノレルは成功したキャリアを通してパーソンズ・スクール・オブ・デザインで教えました。アメリカ服飾デザイナー協議会の創設者でもあり会長を務めました。
作風
作風は、細心な仕立てと簡潔なライン、シンプルで機能的だが超一流のエレガンス、などと言われます。
代表的な作品にはローブ・キュロット、メタリックな表面効果のあるイブニング・ ドレスなどが知られています。今日でもノーマン・ノレルの作品は、その信じられないほどの品質と古典的なデザインのため、人気のヴィンテージ作品です。
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ミシェル・オバマの着るノーマン・ノレル。中古の黒色レース地のドレス(2010年12月)via Michelle Obama: some of my favourite looks 2008-10 | Silk Path Diary
上の写真はアメリカ合衆国第44代大統領バラク・オバマの妻ミシェル・オバマの着るノーマン・ノレル。
2010年12月にワシントンでのクリスマス・コンサートのために彼女はニューヨーク市マンハッタン区チェルシーのニューヨーク・ヴィンテージから取り寄せた中古の黒色レース地のドレスを着て昔の学校に行きました。 ファースト・レディーが公式イベントに1950年代のヴィンテージ・ドレスを着た初めての例です。
私の一目惚れ
私はコントラスト(対照性)の強い作品が好きなので、ノーマン・ノレルというと1972年のイヴニング・ガウンです。
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ノーマン・ノレル イヴニング・ガウン 1972年 via Norman Norell | Colette Blog
スカートの裾へふんだんに毛を施して、縦ストライプと交差する点が大胆で豪華に感じました。
上衣のセーターがとてもタイトで身体のラインそのものです。下体衣のスカートがエー・ラインで身体線の見えない点と対照的です。白黒写真ですが、これはほぼそのまま受け取ってよく、セーターが黒色、スカートは白黒。
ベルトは白色です。この太いベルトもゴージャスです。上位と下位のバランスがもろに黄金比となっている点も好きです。
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