この記事では、スカートの歴史と名前の種類を意味や流行から説明しています。
スカートは20世紀になってからとくに、女性むけの下衣に着られました。
でも歴史をさかのぼってみると、別の世界がみえてきます。
スカートの名前を網羅したスカート用語集、およびスカート最新アイテムは下記を参照ください。
スカートの意味
スカート(skirt)は腰部以下を筒状に覆い、脚をもたない独立した腰衣の名称です。
また、上体衣と一体化された(ワンピース)丈の長い衣服の筒状の腰部以下もスカート(やスカート部分)といいます。
後者の場合、衣服生成史からみてスカートは貫頭衣やチュニックの一部ともいえます。
例外
まれにフロック・コートなどの男性用衣服でも、ウエストで横に切替線をもつものは、切替線から下の部分をスカートとよびます。
現在ではスコットランドのキトなどのわずかな例外をのぞいて、ほとんど婦人のみが用いています。
語源
英語のスカートは裾、縁、端の意味をもち、フランス語でジュップ(jupe)。日本語では裳裾(もすそ)に該当します。
日本語では一般に女袴という訳語もあてられたことがありますが、スカートという言葉が一般的です。
スカートの歴史 : 主にヨーロッパ貴族史として
古代 : 腰布を巻く
ファッション史ではスカートの最も原始的なものとされているのは古代エジプト人の用いた腰巻「ロイン・クロス」(loin cloth)といわれます。
これま手拭のような小さな腰布で、ボタンも紐も留め金もなく、布そのものを結んで腰に巻いたものです。
次の段階になると布切れを輪にして一方を縫い筒型にし、ウエストにひもを通して締めたものが登場したと考えられます。裾幅には自然運動量が入っているため採寸の必要はありません。
なお、中国にみられたワンピース衣装(貫頭衣)のスカート部分の登場は古代エジプト(紀元前3000年頃に始まった第1王朝以降)よりも古い時代にさかのぼることができます。
中世 : スカートを膨らませる
中世になるとヨーロッパでは男性の下体衣にズボンが現われます。
それにつれ、スカートは大部分が婦人のものとして使われていきます。ただし、キルトにみられるように、まれに男性が着用することもありました。
1375年に鋼鉄針が開発されて以来、ヨーロッパでは洋裁技術が進み、服の構造に立体的なものがみられるようになります。
ゴアー(まち)の技術が導入され、現在のサーキュラー・スカート(circular skirt)にみられる円形裁断が考案されます。
ルネッサンス期にスカートは外形的に膨らみのあるものが貴族間で好まれるようになります。
16世紀中頃には、ファージンゲール(ファーチンゲイル farthingale)という下着用の枠がスカートに導入され、膨らみは一段と誇張されていきました。
18世紀ロココ時代のフープ入りのスカートはその最高潮を示します。
同時に、コルセットで腰を締めつける動向も並行します。
フープ入りスカートのエピソード
フープ入りのスカートは釣鐘スカートともいわれます。
この種のスカートはルイ14世の愛人モンテスパン侯爵夫人が発明者といわれますが、先のファージンゲールとの接合がつきません。
モンテスパンがフープ・スカートを愛用し推奨した目的は、できるだけ長く社交界の花形でいたいという願望を満たすため、自分の妊娠を隠したかった、といわれています。
詳しくは英語ページ「Before “Babies ‘n Bellies,” what did pregnant women wear? | Sandra Gulland」(外部リンク)をご参照ください。
そのため、このスカートにはシュバタール(私生児隠し)という生々しい呼称もありました。当時の社交界の風紀が紊乱していることを示しています。
近代 : スカートの歴史の終わり
クリノリン・スカートやバッスル・スカートの登場
18世紀末にフランス革命が生じ、服装の上にも大きな変化がおこりました。
反動として従来の人工的細工が失われ、直線的でほっそりしたエンパイア・スカートが出現します。
平和な時代は少し続きましたが、1830年頃になるとフープ入りのスカートが復活し、再び膨らみのあるスカートに戻りました。
この時期のフープ入りのスカートはとくにクリノリン・スカートやバッスル・スカートと呼ばれます。
スカート丈の上昇 : 民衆史に推移
19世紀の終わりから女性解放の気運にともない、婦人のスポーツ熱も高まり、これまで脚を覆っていたスカートは短くなり、脚を見せ始めます。
第1次世界大戦直後(1917年)、スカート丈はふくらはぎ(脹脛)の上まで上昇し、1926〜1928年頃には膝下スカートが出現しました。
戦間期にスカート丈は少し長めになりますが、第2次世界大戦が勃発して再び短かめのスカート丈となりました。1953年には床上がり50センチにまで跳ね上がりました(クリスチャン・ディオールによる)。
ミニ・スカートの登場 : 床上から膝上へ
スカートが短くなる傾向は留まらず、1963年頃に英国の女性ファッション・デザイナーのマリ一・クワントが膝上20センチほどの極端に短いスカートをつくり、床上がりに代わって膝上という言葉が出ました。
フランスのアンドレ・クレージュも1964年頃に詳細な計算によって、全く新しいプロポーションで構成されるミニ・ドレスを考案しました。以後、ミニスカートは驚愕、非難、興味などの色んな世間の批判を引き起こします。
それでも、活動的で若々しいミニスカートやミニ・ドレスは世界中で愛用されました。ミニとはミニマムの略で、最小の意味。単に丈の短いショートスカートとは異なり、特有の若々しい雰囲気をもちました。
1960年代から1970年代にかけて、スカート丈が床上がりが長いだけでなく、ベルト位置がウェストからヒップボーンまで落ちたヒップボーン・スカートまで登場しました。
できるだけスカートを小さくみせようとする傾向を反映し、マイクロ・ミニやマイクロ・マイクロ・ミニなどの呼称も登場しました。
ミニスカートのリバイバル
なお、ヒップボーン(hipbone)という英語は腰骨のことです。ここから、腰骨の位置で着られた股上の浅いボトムをさします。
1960年代・1970年代に流行したスタイルで、腰にぴったりフィットするように裁断されました。ヒップスターも同じです。
1990年代半ばリバイバルし、ヘソ出しルックにつながりました。
マキシ・スカートの登場 : スカートの歴史の終わり
1967年、最大限に長いという意味のマキシ・スカートが登場します。
マキシはマキシマム(maximum)の略語で、スカートでは脹脛下までの丈をさします。その後も足首丈のロング・スカートも出現しました(19世紀の丈の再現)。
次の作品は「婦人画報」1971年1月号、20~23頁に掲載された岩下志麻の衣装です。カメラは篠山紀信、デザインは鈴木宏子。
これであらゆる丈のスカートが民衆レベルで出揃い、スカートの歴史は閉幕しました。
スカートの種類
目的別
イブニング・スカート、ライディング・スカート、ビーチ・スカートなど
素材別
レザー・スカートなど
シルエット
丈の長さ
マキシスカート、ロング・スカート、ミニスカート、マイクロミニスカートなど
技術
形や構造
サーキュラースカート、クリノリンスカート、フレアスカートなど
スカートの素材
スカートの素材には主に次のようなものが挙げられます。
- ウール…梳毛(そもう)フラノ、ギャバジン、サージ、ドスキンなど ⇒型崩れしにくい。
- 麻…リネン、ラミー、ヘンプなど。固めると型崩れしにくい。
- シルク…紬織、厚手物など
- コットン…ピケ、ソフト・デニム、シャークスキン、ギャバジン
- その他…皮・ビニール・イミテーション・レザー、化繊(ポリエステル)など
関連リンク
- “Shakespeare in Love”’s Costumes: Making a Cartwheel Farthingale – 演劇「恋に落ちたシェイクスピア」公開にあたって、車輪状のファージンゲールを作成する過程を詳しく述べたブログ。工程順に写真が添えられていて視覚的にも分かりやすいです。
スカート用語集
スカート用語は長さや使われた技術や装飾を含むことが多いです。
ひたすらカタカタが多いので、英語や仏語の言語の意味をおさえれば簡単です。この観点からまとめたスカート用語集もご参照ください。
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