去年のミニを新しく着るには:「婦人画報」1971年1月号
この特集は「婦人画報」1971年1月号の50頁から55頁までに載っているのです。
このページで取り上げたのは50頁のみ。
デザインは鈴木宏子、生地提供は銀座ストック商会、カメラは秋元茂によります。
特集には他に久我いつ子のデザインと文章も併載されていますが、白黒写真ですので割愛。
リード文
ロンゲットの流行で、古くなったミニにお困りではありませんか?ファッションの魅力は新鮮さにあります。ミディやマキシのロンゲット功勢の中でも、一般的にはまだまだおとろえをみせない気配のミニですが、やはり、新鮮さという点では一歩をゆずることを認めないわけにはいきません。ファッションはわたくしたちの今日の暮らしにとって、あらゆる面での背景をつくり、人間の心を反映しているのです。ミニの支持者も、ロンゲットのダルネス(倦怠感)な感覚を、おしゃれのエスプリで消化することを試みる必要があるでしょう。ぞろりとした不活発なダルネス精神も、着る人のセンスで、ビューティフルを思わせる着こなしがあります。写真はミニ丈のシャツドレスに、ロンゲット(ミディ)のベストを組み合わせて細長いシルエットにダルネスな感覚をたのしみ、打ち合いのない前面から軽快なミニの魅力をのぞかせました。
出典「婦人画報」1971年1月号、50頁
リード文批評
ロングとミニを対照的に読めばそれほど難しい文章ではありません。
この雑誌が刊行されたのは1971年1月ですから記事は1970年やそれ以前を意識しています。刊行時にロンゲットが流行していて、ミニスカートと対照的に捉えられていることがわかります。
1960年代にミニスカートは世界中の都市部に流行しました。リード文からはロンゲットの流行はその反動と読めます。
新鮮さにおいてミニはロンゲットにかなわないと記されているので、1970年頃にはミニ着用の感覚疲労が多くの女子たちを襲っていたと思われます。ロンゲットの呼称はともかく、1950年代を知っている人には、ミニのワンピースの上にベストを着た右よりもベストを脱いだ左が新鮮に感じるはず。
1960年代のミニ大流行はロンゲット風衣装への対抗だったのですから。
ロンゲット(longuette)の訳語は「細長い」。アメリカの女性ファッション商業誌「Women’s Wear Daily」1970年2月2日付で初めてこの言葉が使われたといわれます。
同1970年のパリ・オートクチュールでのコレクションでは「さよならミニ、ようこそロンゲット」が大きな主題になりました。これらを起点として1970年代にミニスカートと同じくらいに、ロンゲットは脹脛丈(ミディ)や踝丈(マキシ)で大流行。
ダルネス(倦怠感)については筆者(おそらくデザイナーの鈴木宏子)が当時ロンゲットに付随して新しく知った言葉なのだろうと少し疑念。ミニを逆にダルネスと捉えることも可能ですから(映画「欲望」の感想記事をご参照ください)。
最後に、サイハイ・ブーツが当時からあったことを再認。プリーツのスカートとアンバランスな感じがして逆にかっこいいですね。
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