きもの散策・鎌倉「ミセスの晴着」
いずれも、
- カメラ:椎木厚
- ヘアと着つけ:新藤愛(山野美容室)
特集リード文
北鎌倉駅から鎌倉に向い大通りを徒歩約5分。界隈の静けさを集めて浄智寺の石橋がある。この北百メートルのところ、通称”駆け込み寺”東慶寺の賑わいもしばし遠のき、山門にはじまる石段が奥深い。
出典 「婦人画報」1975年1月号77頁
特集リード文批評
特集のキャッチフレーズに「きもの散策=於、静寂の史都鎌倉」。
「静寂の史都」が単なる過疎か人間が多くても静寂なのかは未見。縁切寺の「東慶寺」が賑わっている半面で人知れず静かな場所とったところでしょうか。
今となっては日本全体が縁切寺となってしまっています。
約5分かけて徒歩し、さらに100メートル徒歩して、この程度の着崩れで撮影場所まで到達したかどうか。検証の余地あり。
淡い光沢と質感も豊かな綸子地
リード文
淡い光沢と質感も豊かな綸子地に、波頭を刺して鮮やかな訪問着と光琳図の袋帯。新春にふさわしい華やぎと格調備えた若いミセスのひと揃いです。
出典 「婦人画報」1975年1月号77頁
染め紬の訪問着と付け下げ
リード文
鎌倉にはまた花を訪ねる。春、建長寺の桜。初夏、明月院の紫陽花。秋、妙法寺の芙蓉。冬、ここ浄智寺の山茶花、瑞泉寺の梅、水仙など。
お年始のお客さまの応待や、親しい方々のお宅へのご挨拶にはあまり大げさすぎず、しかもどこか月並みでなくと、考える方のための染め紬の訪問着と付け下げです。右は微妙なあずき色地に花柄を扇面取りに描いた訪問着に、笹蔓。
出典 「婦人画報」1975年1月号78頁
紋様のなごや帯ほか
リード文
紋様のなごや帯。左はごくあわい象牙色地に墨描きの草むらと刺繍の菊花。帯は鹿の遊ぶ奥山を題材にした名物裂写しのなごや帯。金銀の華やかさを控えて、落ち着いた大人のおしゃれを感じさせる二組です。きもの:菱一、帯・三京
通りを一歩入ると思わぬ静寂に出合う。三方は山に囲まれ、そこここの坂や切り通しは四季の散策を多様で変化に富んだものにしている。
出典 「婦人画報」1975年1月号79頁
リード文批評
この特集は鎌倉で散策していることをテーマにしているので、名古屋帯の言葉は使わずに「なごや帯」、地名をぼかす効果があります。
しかし、名古屋で開発された帯を鎌倉で使う点は「地場」の崩れた西洋性を示しています。
四季のない現代日本では残念ながら「四季の散策」はできなくなりました。
駒無地ちりめん
リード文
かつての鎌倉文化の残照は、京の雅と好対照の簡潔な印象となって訪ねる人々をとらえてきた。いまかたい花々の蕾は行く年の鐘の声を幾度きいたことだろう。
しなやかな駒無地ちりめんのこの付け下げは、三十代から四十代にかけてのミセスに。お正月に限らず、結婚の披露宴やパーティーなど広範囲にお召しになれます。きもの・秩父商会、製作・北秀商事、帯・三京、バッグ・久のや
出典 「婦人画報」1975年1月号80頁
古典柄のもつモダンな表情
リード文
ご結婚後、初めてのお正月。そんな雰囲気の、きものも帯も古典柄のもつモダンな表情を生かした華やかなひと揃い。新しい親族との交際の機会もふえる一方、まだまだ未婚のお友達との付き合いも……。洋服育ちの若いミセスにも比較的的着こなしやすい付け下げです。きものと帯・鈴乃屋
出典 「婦人画報」1975年1月号81頁
リード文批評
現代日本では結婚しても「新しい親族との交際の機会」は増えません。
ふつう既婚・未婚の区別が厳しかった20世紀は、結婚によって「未婚のお友達との付き合い」は減ります。
このように本来、相反的な親族や友達という二つのグループを一緒くたにして、着用機会が増えると錯覚させて購入を促す効果になるでしょうか…。
幾何学文様をモダンと捉えるのはどうか…。
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