このページでは1960年代の雑誌に掲載されたストッキングを細く見せる方法を紹介しています。タイトルは「フィットした靴下:細く見せる靴下のニューフェイス」、筆者は大内順子、出典は「ドレスメーキング」鎌倉書房、1966年1月、202頁・203頁です。
商品紹介を兼ねて当時のストッキングの新製品が記されています。また、最後の方には脚を細く見せるためにどんな色のストッキングを選ぶべきかをアドバイスしています。色の工夫は今でも役立ちます。
靴下=ストッキングととらえている点が当時らしいです。添えられた写真は脚・ストッキングも靴もモデルも可愛いのですが、なにぶん白黒で画質が悪いので省略。
フィットした靴下:細く見せる靴下のニューフェイス
最近ほど脚にポイントを置いたファッションが流行することは、今迄にはまずみられなかったものといえましょう。
「脚にポイントがある」「脚を強調している」とは、解剖してみますと非常に「女」を意識させるセクシーなおしゃれといえます。
フランスでは女の人が脚に手をふれること、例えばストッキングをなおすなどの仕草を男性の前でするのは、「その男の要求に答えますよ」という意味のサインになるとか。
ところで、現在のファッションはこの女っぽいセクシーなはずの脚強調が、若々しい子供っぽい可愛らしさや、直線的な活動的なラインと結びついているのですから、ことは少々面倒です。脚の美しさも、ただの色っぽさやセクシーさだけでは充分ではない訳。色気がありながら若々しい清潔さがある脚…大変面倒な、数々の要素が求められているのです。
こうした要素に答える第一の条件は何といってもほっそりとしていること
ほっそりと…簡単に口にしますが持って生れた脚そのものを細くすることが出来ない以上、これは非常にむずかしいことです。だからといって完全にかいらめてしまってはおしゃれ失格。まずスカートの幅や丈とか靴のえらび方などで欠点をカバーし、良くみせるよう研究することが大切です。
そしてもう一つ、脚そのものをおおっているストッキングについての考慮も決して忘れられないこと
最近は「シャミー」という靴下のように足首の両サイドだけ色を濃くつけ、足首を細くみせる効果を狙ったストッキングも出ています。
「足首を細く」それを更に進めて全体を細くと願って作られているのが、近頃話題を集めている靴下でしょう。脚を細くスマートに見せたいと願っている私達、女性にとってはまさにうれしい存在というわけ。
伸縮性が非常に大きい為、脚にぴったりとフィットする、また普通では動きによって出来やすいたるみやしわが子の靴下には全くみられない、「第二の肌」という言葉にそれこそふさわしいものです。
ところでこのストレッチ性を持つストッキングには三種類あります
- 出来上った靴下に超音波をかけてフィット性を持たせたもの。例えばニチレイバークシャーのウルトラゾン。
- 原糸の段階でストレッチ性を持たせたもの、例えばグンゼのフィットF-10、タピロンがそれ。
- 撚糸の段階でストレッチ性を持たせたもの、例えばグンゼのフィットF-1。
このうち2はタピロンの名でかなりのメーカーから発表されていますが、はいていない状態では小さくちぢんでいる、半ばフリーサイズのような靴下です。
さて、この3種類のストレッチ靴下についての各特徴を比較したデータがありますので一応ご紹介しておきました。
3種類のストレッチ靴下の比較表
F-1 | F-10 | ウルトラゾン | |
美しさ | ○ | ○ | ◎ |
感触 | △ | ○ | ○ |
強さ | ◎ | △ | △ |
伸縮性 | ◎ | ◎ | ○ |
ただほっそりとたるまない靴下というだけでなく、こんな場合も活用して行きたいものです
靴下をはく時、かならずガーターベルトかガードルを着て、それで吊るというのはもう常識ですが、和室に座る場合、困ることもあります。きちんと座ると、それだけ靴下がつっぱって伝線しやすい。そのため座る前にあらかじめガードルからはずしている人も少なくないようです。
けれど、立った時「ちょっと失礼」などと靴下をなおす姿は、どうみてもおしゃれからは程遠いもの。これからお正月などの季節にはよそを訪問してきちんと座らねばならない機会も多いこと。こんな時、ありがたいのが伸縮自在の靴下の存在です。
幾分明るい自然の肌色を上手にはきこなしたいもの
さて、こうしたストッキングを研究してはいても或る程度以上にほっそりとみせることはやはり不可能です。そんな時、大切なことは「一見短いスカートなどで脚を目立たせるように見せながら、その実はストッキングに目立つ色や柄を使わずに、洋服に一目をひくような装い方をすることでしょう。
ダークカラーが脚を細くみせるとはいうものゝこれも程度を越すと、ただ人目をひくだけで逆効果。しかも白っぽいストッキングばやりの最近では古くささを感じさせます。かといって白いストッキングは最も危険なしろもの。
ドレスの色には気をつけても、靴下には無頓着というのもおしゃれの落第生です。買う時には、自分の肌の色を頭に入れておくことをお忘れなく。
(文・大内順子、資料提供・グンゼ)
出典 「ドレスメーキング」鎌倉書房、1966年1月、202頁・203頁。
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