結婚式に出席するミセスたち:婦人画報1968年10月号
この4点の「結婚式に出席するミセスたち」は「婦人画報」婦人画報社、1968年10月号、88頁~91頁に掲載されたものです。連載の「ドレス相談室」。
デザインは鈴木宏子。生地提供は銀座ストック商会、ヘアは近江美容室。
いずれもミニドレスが鮮やかなうえ、モデルたちの色っぽい熟女っぷりに萌えたので取りあげました。とくに2点目と4点目。4点とも、もう少し脚がほっそりしていたら…。
連載は大阪府に住む読者の質問に答える形で、作品と回答文が載っています。まず質問から。
質問
私は24歳の既婚者。この秋いとこの結婚式に招かれていますが、適当な服を…。なお中年の叔母の服装も合わせてお教えください。「婦人画報」婦人画報社、1968年10月号、88頁
以下は鈴木宏子と思われるデザイナーによる回答です。
改行を適度に入れて読みやすくしています。
お答え
服装上のしきたりの中でも特に結婚式などの礼装は、洋服と和服の違いがはっきりと区別されています。
ことにミセスの場合は、和服では江戸棲という決ったスタイルがありますが、洋服では白は用いないこと、という漠然としたタブー以外、これといった制約はありません。それがあまり自由すぎるために、かえって不安を感じ、自信がもてないようです。
結婚式から披露宴までとなると、相当長時間着ているものですし、また、まわりの和服の人々との釣合いも考当して、ミセスらしい格調の高い装いに、適度の流行も加えたいものですが、外国とは全く習慣も違うのですから、日本の状況にふさわしい礼装を選ぶことが大切でしょう。「婦人画報」婦人画報社、1968年10月号、88頁
お仲人さんになられたときは
年配のミセスは、ときにはお仲人という役目をなさることもあるでしょう。日ごろ洋服になれた方でしたら、花嫁さんが洋装の場合、わざわざ江戸棲をお召しにならなくても、洋服のほうが動作もしやすく、かえって便利でしょう。
白以外なら何色でも、また柄ものでもよいという気軽な礼装ですが、お仲人ともなれば品位が第一。やはり黒にしましょう。黒のなかではレースやマトラッセなどの変化のある織りが、こうしたお祝いの席にふさわしい華やかさがあります。
クレープは絹、毛、化裁のいずれも品位がありますので、黒いクレープのドレスに、メタル入りのマトラッセやレースの短いジャケットを着るアンサンブルの形式は、とてもしゃれた装いになります。
黒一色の服には、帽子、ネックレース、コサージュなどで華やかさをそえたいものです。黒のほかは、淡いブルー、ラベンダー、グレー、ベージュなど。帽子に自信のない方は、髪型を工夫してくだい。「婦人画報」婦人画報社、1968年10月号、88頁・89頁
リード文批評
ネックレースはネックレス。
「クレープは絹、毛、化裁のいずれも品位」ありとのことで、一部の人たちに天然繊維と化学繊維の区別や偏見がない点に注目。
ミニスカートへの言及がない点から、当時はかなり当然視されていました。
若いミセスにローズ色のスーツ
リード文
美しい地紋を織り出した絹のモアレやテーラードなスーツをつくり、ボタン代りにリボンを結ました。ブラウスは豪華な二重織りのシフォンなので、上着を脱いでもフォーマルな装いとして通用します。靴は同色が効果的です。「婦人画報」婦人画報社、1968年10月号、89頁
リード文批評
モアレは多様な意味をもつ言葉です。単純には波紋形の生地のこと。
織物に特別な組織と加工装置で、波形や雲のような模様をつています。
ピンク色の生地が鮮やかで、腹部にリボンがあるのが特徴。リボンは茶色よりも白色か生地より薄めのピンクが良かったかと思います。
衣装は全体的にほっそり見えるシルエットなので、髪型はもっと押えるべき。
年配のミセスにプリントのツーピース
リード文
ベージュ地に黒い模様の綾絹です。裾に向って開いたシルエットの長い上着。その下からプリーツのスカートがのぞきますが、上着丈が美いので落ついた雰囲気を感じさせます。黒の造花がこの服にふさわしいアクセサリー。「婦人画報」婦人画報社、1968年10月号、89頁
リード文批評
ベージュ地を使っている半面で黒色の模様はかなり派手。
モデルのメイクとヘアスタイルと似合っていて、全体的に大胆でカッコいいです。
何をつけるなら上衣のジャケットが少し長め。もう少し短いとミニスカートが映えてきます。
それにしてもゼブラ柄にしか見えない黒模様は強烈なインパクトですね。
お客さまとしてのミセスの装い
特別なお役目のないお客さまでしたら、ご親戚の場合でも黒にかぎらず、プリントでも結構。二重、三重の織り方で柄を浮き出したマトラッセや、つや消しのシルクウールや、綾絹にプリントをつけたものなどはフォーマルな雰囲気にふさわしいきれ地で、しかも、昼間から着つづけられるものです。
目新しいきれ地ではモアレ(木目模様)の厚地シルクがあります。この生地の黒やべージュはエレガンスな感が年配のミセスむきですし、明るい色ものは若いミセスにふさわしいロマンティックさをもっています。
どの場合も、昼間から着ることに重点をおき肌のたくさんみえるデザインはさけるべきです。もし他の用途を考えるときは、必ず袖のある上着を組みあわせておきましょう。年配の方もおきまりのアンサンブルやスーツにこだわらず新しいチュニックや、フレヤーやプリーツを入れてみましょう。すてきにみえるのは、きれ地や柄だけでなくデザインの新しさが、なによりも大きな魅力になるのですから。「婦人画報」婦人画報社、1968年10月号、90頁
批評
裁縫上の工夫に言及した積極的な文章。
生地柄だけでなく衣装デザインの新しさも魅力になると述べています。
衣装デザインに重点を置く解説は次の文章でも行なわれています。
若いミセスは明るい色の装いを
未婚の人との区別は色彩ではありません。可愛いピンクや赤でも、デザインにミセスらしいシックさがあれば、落ついた雰囲気になるはずです。また、ドレッシーなきれ地でつくるスーツは、上着を脱いでもカクテルとして着られるブラウスを組みあわせておきましょう。「婦人画報」婦人画報社、1968年10月号、90頁
マナーを心得た用途の広い服をおすすめします
結婚式におよばれしたからカクテルドレスをつくりたいというご注文を受けますが、ちょっとお待ちください。
もし夕方から夜にかけての正式のカクテル・パーティーに出席なさるのでしたら、文字通りカクテルドレスはぴったりです。しかし、外国では昼間の結婚式はアフタヌーンドレスが正式。
日本でも昼間の式から、夜の披露宴までお召しになるのには、やはりアフタヌーンのような装いがふさわしく、用途も広く、ちょっとしたパーティーや劇場へも出かけられ、シーズン中にいく度も着られてたいへん経済的というものです。
結婚式や披露宴だけにしか着られない、そんな服を見つくることは洋服のよさをほんとうに理解していなはように思えます。用途が広く、しかも充分マナーを心得た服を、この機会にミセスのワードローブに加えておきたいものです。「婦人画報」婦人画報社、1968年10月号、91頁
結婚式や披露宴以外でも着られる服を用意する点を指摘。
これは節約的な観点からも正しいと思います。
「外国では昼間の結婚式はアフタヌーンドレスが正式」といいますが、昼間に着るからこそアフタヌーンドレスというのであって、ここは論理転倒。
若いミセスに赤いシフォンのドレス
リード文
すける布地に、赤の濃淡のペーズリー模様。久しぶりに復活してきたウエストラインを、上体のブルゾンで目立たせて、たっぷり入れたスカートのフレヤーと、大きなパフスリーブで、うす地を効果的に使ったデザインです。「婦人画報」婦人画報社、1968年10月号、91頁
リード文批評
ワンピースドレスかアンサンブルか、ちょっとわかりません。
接膚衣のキャミソールとスカートが一連のワンピースでしょうか…。
フレヤーはフレアのこと。パフスリーブは肘から袖に書けて広がった袖のこと。
リード文をみてはじめて気づきましたが胸部や袖のところがシースルー。
色っぽいのですが、共布のスカートがやや目立つのとフレアスカートにしているのとで、透け感が上手く発揮できていないように思います。
シースルーの服はスカートやズボンをすとんと下に落としたHラインと合わせると映えます。
年配のミセスに黒のアンサンブル
リード文
お仲人さんにもふさわしい装いです。小さな上着はリボンレースを使い、長袖は透ける美しさを、衿ぐりから裾までレース模様のスカラップをいかしたデザイン。中のドレスはレーヨンクレープ。高めのウエストラインから、やさしいドレープを流した優雅な服です。「婦人画報」婦人画報社、1968年10月号、91頁
リード文批評
スカートと上衣がワンピースとなっています。
小さな上着に透け感を出しています。
スカラップ模様は余計か…。
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