レース(lace):技法や材料から起源や歴史まで

ファッション歴史
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レース(lace)は透かし模様のある繊維製品のことです。

おおむね、レースはイタリアがリードしてきました。

この記事では、レースの技法や材料から起源や歴史まで包括的に解説しています。

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レースの意味

英語「lace」は紐、紐締め、紐で締めるなどの名詞や動詞の意味をもっています。

この意味から、1本以上の糸や紐を使って、編み、組み、絡み、撚り、捻りなどの作業をつうじて構成する透かし模様の繊維製品をさすようになりました。

フランス語のダンテレル(dentelle)、イタリア語のメルレット(merletto)、ピッツォ(pizzo)、ドイツ語のカンテ(Kante)に相当します。

針目の意の英語のポイント(point)、フランス語のポワン(point)、イタリア語のブント(punto)、ドイツ語のスピッツェ(Spitze)もレースとほぼ同意。

技法

レースにはいろんな技法があります。

だいたい次の6種に分類できます。

  1. ニードルポイント・レース
  2. ボビン・レース(トーション・レースなど)
  3. 刺繡レース(エンブロイダリー・レース)
  4. クローシェ・レース
  5. ノッティド・レース
  6. 編みレース(ニッティド・レース)

これらのうち代表的な技法は1と2。

材料

イタリアではルネサンス期から亜麻糸を主な材料とし、金糸、銀糸、ウール糸などを用いていました。
19世紀に木綿糸が加わり、亜麻糸よりも多く使われました。

レースの起源

起源は先史時代からみられる漁や狩猟用の網、布端や紐の端のほつれから生じた房や古代からの組紐、刺繍など。確認できる地域はヨーロッパ各地から西アジアにおよびます。

装飾目的のレースに限定すると、15世紀末から16世紀初頭にかけてイタリアで開始。

当時の写実的な絵画から推測すると、この頃のレースは精巧なカットワークやドロン・ワークやダーンド・ネッティングなどの刺繍の技法の応用であったと思われます。幅は非常に狭いのが特徴。

レースの歴史

現在残っているパターン・ブック(図案集)によると、16世紀中期には地布の部分が減り、空きの部分のほうが多く、これはプント・イン・アリアといわれます。

ピンクイロノプント・イン・アリア。Pink Punto in Aria

ニードルポイント・レース

17世紀前半には完全なニードルポイント・レースが出現します。イタリア、フランス、フランドルが主要産出国でした。

やがて、それぞれの産地スタイルの特色が明瞭になり、技術はきわめて高度となります。そして、家庭での手芸の域をこえて、専門的職人の手によることが多くなりました。

ボビン・レース

ボビン・レースの発生地いまだ不明ですが、16世紀中期にはイタリアで専用のパターン・ブックが刊行されていたことがわかっています。16世紀末にはフランドルに進んだ技術が存在したという記録もあります。

当初のデザインはニードルポイント・レースの模倣が多く、技術は比較的単純で、細幅に限られていました。

17世紀までニードルポイント・レースの代用品的評価を受けてきましたが、17世紀後期からフランドル各地、イタリアのミラノ、ジェノバなどを中心に著しく発達。

レース全体の最盛期は18世紀

18世紀には独自のスタイルを生み出し、ロココ様式の影響のもとに、いろんな種類のレースで、繊細で緻密な図柄が好まれました

。この18世紀が技術、デザイン、種類の豊富さとともにレースの最盛期です。

19世紀のレース

19世紀のレースは、産業革命やフランス革命などにより、レースを消費する社会階級と、技術を伝承する職人の多くを失いました。さらに機械生産による質の低下、あるいは大衆化などの影響を受けました。

16~17世紀のラフやカフス、17〜18世紀のフォンタンジュ、ラペット、クラヴァット、アンガジャント、ジャボなどは19世紀に完全に失われたといわれます。

とくに男性服からは完全に姿を消しました。これにはジェンダーの問題があるでしょうから、単純に産業革命、フランス革命、機械生産、大衆化にレースの転換要因を求めるだけでは説明になりません。

他方、急速に発達してきた機械製レースや機械・手工併用レースは19世紀半ばにロココ様式を思わせるものとして女性服に定着していきます。

その後19世紀末にかけて手工芸ブームが起こり、手工レースへの関心が高まります。各レースの産地は活気づけられたようです。

20世紀のレース

しかし、20世紀には機械レースが以前よりさらに進歩し、服装が単純化していった傾向から、手工レースは実用の機会をもてなくなりました。

関連アイテムや技法

レーシー・ストッキング(lacy stocking)

レース状に編まれたストッキング。ネット・ストッキングや網タイツよりも複雑で装飾性が高い。

レーシー・ニット(lacy knit)

レースのように穴が多く開いて、透けて見える編地。

レースアップ・シューズ(lace-up shoes)

紐を結んで足に留める靴。レース・シューズとも。代表例はオクスフォード・シューズ。

レース・アップ・ブーツ(lace up boots)

前か側面のいずれかが紐で締めるようになったブーツ。レースド・ブーツとも。レースを飾り付けたブーツではありません。

レースアップ・フロント(lace-up front)

紐締になった前開きの衣服。多くは鳩目で、紐を交差させて締める。

レース編み

レース状に編んだり柄を作ったりすること。大きく二つの意味に大別されます。

  • 手編みの鈎針編(かぎばりあみ)…繊細なレース目に編むこと。撚りの強く細い綿糸とレース鈎針を使って編みます。ドイリー、テーブル・センター、カーテンなどの室内装飾品や、カーディガン、ツーピースなどの衣服にも使われます。
  • 緯編(よこあみ)の変化組織の一種…ニードル・ループ目移し、透孔編みとも。手編機や棒針編では穴あき模様や透し模様などという場合もあります。編成中にニードル・ループを隣の目に移し、レース調の柄をつくります。移したところは穴が開きます。カーテン、レース、メッシュ靴下などに使われます。また、シンカー・ループを上のコースに移して編み、透し柄をつくることをとくにペレリソ編みといいます。

レース糸

クローシェ・レースやニッティド・レース専用の糸の総称。上質のエジプト綿による木綿糸をはじめ、絹、麻、合繊の糸を用います。

木綿糸には撚り方に柔らかい仕上がりの片撚りと、かための再撚があります。太さは太い順に1番から150番まで。

レース・ストライプ(lace stripe)

透けて見える紗(織物の一種)の生地に別の組織であらわした縞柄のこと。薄地のブラウス、ドレスなどに使われます。

レース・フィリング・ステッチ(lace filling stitch)

レース状に刺す(縫う)技法。ダイアモンド・ステッチとも。

レース・マーキゼット・ボー(lace marquisette bow)

綿・人造絹糸・絹・ナイロンなどを素材とした紗(織物の一種)の目の粗い薄手の織物。カーテン地、服地、装飾用品、蚊帳などに使われます。

1978年頃にクロエがレースのボーとして、束ねた髪を結ってアクセサリーにしたのが有名です。

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この記事を書いた人

いろんなファッション歴史の本を読んで何も学べなかった残念なファッション歴史家。パンチのあるファッションの世界史をまとめようと思いながら早20年。2018年問題で仕事が激減したいま、どなたでもモチベーションや頑張るきっかけをください。

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