フィルム・スタディーズ事典
フィルム・スタディーズ事典:映画・映像用語のすべて:映画・映像に関する用語・人名・作品名を収録した用語事典です。映画産業と映画研究の両方で専門用語が発達しすぎたため、本書は入門的参考書をめざして分かりやすく説明されています。配列は見出し語の五十音、アルファベット、数字順。巻末に人名レファランスと映画題名レファランスが、カタカナ表記・原語、収録箇所・関連分野の順で案内されています。
本書の内容
入門書を目指しているので読みやすさは抜群です。最初、映画の技術や機材などの専門用語を映画作品を使って説明するという、通常とは逆の説明方法にやや面食らうかもしれませんが、本書の説明方法でスト、次に見るべき映画、次に見たい映画を探すように読めますし、既に見た映画で説明されていれば、どんどん読み進められます。項目別に記述されているので、気になる専門用語を少しずつパラパラと読むだけでも楽しめます。
たとえば、100年ほど前のサイレント映画(無声映画)ですと、「現在まで、映画史のおおよそ3分の1の期間は、サイレント映画が続いた。このことだけでもサイレント映画は重要である」(124頁)と記されていて、愕然とします。そして、サイレント映画の勃興時には既にサウンド映画の構想は始まっていて、「記録されたサウンドを映像に付加する実験は最初から数多く存在した」(127頁)と指摘して、映画における「映像>音」という不等式の先入観を打破します。かなり明快です。
ジェイムズ・モナコの『映画の教科書』並みに猛烈な勢いで多数の映画・監督・俳優が出てきますので、本書を手に取ると驚嘆・萎縮してしまいがちですが、この2冊があれば、どんな映画でも深く見られて、より一層楽しめるので、お勧めです。
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スティーヴ・ブランドフォード、ジム・ヒリアー、バリー・キース・グラント『フィルム・スタディーズ事典―映画・映像用語のすべて―』杉野健太郎、中村裕英訳、フィルムアート社、2004年
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