本書は、1930年代のハリウッド映画で人気を二分したグレタ・ガルボ(Greta Garbo)とマレーネ・ディートリヒ(Marlene Dietrich)の経歴、作品解説、評論、出演場面を収めたものです。
映画場面の写真が多く、合間を縫って経歴や作品解説や評論がひしめき合っています。かなり凝集度の高い出来栄えで、彼女たちのファンはぜひ持っておきたい一冊です。
本の体裁というか表紙が面白く、カバーを取ると真ん中に「ガルボ/ディートリッヒ」の背文字がきて、向かって左側にガルボ、右側にディートリッヒの巨大な顔が並びます。
どちらを表紙と取るか、どちらを裏表紙と取るか…。私は縦書きの本のように右へ開くように、いつも置いています。ガルボの冷徹な石膏のような顔に惚れこんでいるので…。
あと、細かく言えば次の写真の通り、ディートリッヒの顔の方が裏表紙に扱われています。が、そんなことはどうでもいい。
経歴と作品解説がとても詳しく、今となっては貴重な評論も見逃せません。目次をざっと書きならべてみます。
目次
- 淀川長治「懐かしのガルボとディートリッヒ」
- 小森和子「ガルボとディートリッヒ―この2大女優のマジックと私―」
- ロラン・バルト(篠沢秀夫訳)「ガルボの顔」
- 砂山健「蠱惑の麝蘭、その花粉に塗れた贋の末裔―ファッションの錬夢術遊戯に酔う女たち―」
- 野口久光「見出されたディートリッヒ、そして彼女自身を見失わなかった彼女」
- 金井美恵子「肉体的知性 マレーネ・ディートリヒ」
- 植草甚一「ディートリッヒというとスタンバーグとの関係が出てくるし、ガルボといえばガルボ・ハントなんてのが流行したことがある」
- 宇田川幸洋・山田宏一構成「グレタ・ガルボ 経歴と作品」、「マレーネ・ディートリヒ 経歴と作品」
- グレタ・ガルボ アルバム(北欧のスフィンクス、官能と魔性、蠱惑の美、孤高の女)
- マレーネ・ディートリヒ アルバム(幻の妖花、百万弗の脚、嘆きの天使、女か悪魔か)
- 筈見恒夫「女優変遷史」(扉解説)
見返しは、ラリー・カー(フォー・フェイビュラス・フェイセス)による二人のイラスト。
淀川長治や小森のおばちゃまが寄稿していることに驚き、ロラン・バルトが「ガルボの顔」自体を論じる挑戦をしていることに驚き、その訳者が大橋巨泉司会の「クイズダービー」に出演していた篠沢教授だということにも驚き、20歳からこれくらいの本をばんばん読んで、映画もじゃんじゃん観ていたら、もっと豊かな人間になったのではないかと、取り返しのつかない後悔をしています…。
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山田宏一責任編集『グレタ・ガルボ、マレーネ・ディートリヒ―世紀の伝説、きらめく不滅の妖星―』芳賀書店、1973年
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