本書は1920年代に芸術系・ファッション系の各界で活躍した著名な女性たちに焦点を当てた時代描写です。
取り上げられている人物は、イサドラ・ダンカン、ガブリエル・シャネル、コレット(Gigi の原作者)、ガートルード・ローレンス、ジョセフィン・ベーカー、ウォリス・シンプソン、グレタ・ガルボら。
モダンガールの肖像:1920年代を彩った女たち
1項目あたり3~10ページほどに収まっているので読みやすいです。
写真資料は平均で2ページに1枚ほど、そこそこ多いです。
初出は「エル・ジャポン」や「ハイ・ファッション」などのファッション雑誌が中心。
1920年代はハリウッド映画が文化産業として猛烈な勢いで確立した時代で、その様子がグレタ・ガルボの項目などからよく分かります。
本書が面白いのは、アメリカへ渡った女優たちに焦点を当てるだけでなく、ダンサーのイサドラ・ダンカンのようにアメリカを捨てた女性たちにも注目している点です。
著者らしいグレタ・ガルボ愛も面白く(ガルボをつくった男)、通説を押えた上で新しいエピソードを入れています。
てっきりギルバート・エイドリアンのエピソードもあるかと思ったら、スティレル監督の方で、それはそれで新鮮でした。他の項目でも通説+αが散りばめられています。
他方、1970年代・1980年代のファッション雑誌向け記事だったということと、著者自身のスタイルということから、1920年代の固有名詞と象徴的写真で構成された軽い出来ばえです。最終的には印象で終わってしまいます。
著者自身、1920年代へのタイムトラベルや女性たちのスナップ・ショットと書いていますので、1920年代論になっているわけではありません。入門書としては良いのですが、その分、物足りません…。
かといって最近刊行されているモダンガール本は研究書・専門書も含めて、本書の射程を超えているわけではありませんから、モダンガールについてはこの一冊でOKです。
目次
- リヴィエラ1920年
- ボブのアマゾーヌたち
- レディは神秘がお好き
- ダンシング・オール・ナイト
- モーガン式結婚
- 王子と踊り子
- パーティ・ギヴァー
- 20年代はどんな色
- 公爵夫人の招待
- ディアギレフへの贈りもの
- シャネルに赤いバラを
- 二人のガブリエル
- コレットと殺人鬼
- コレットの美容室
- コール・ポーターの妻
- オーシャン・ライナーの娘
- 黒いヴィーナス
- ランペルマイヤから来た男
- アメリカを捨てた女
- ガルボをつくった男
- ベルリンのルル
- イット・ガール盛衰記
- 趣味と愛憎
- ヴァン・ドンゲンと3人の女
- 絵を描く夫婦
- イーダのポートレート
- 絵を描く女
- ハイフンの家
- 乗馬福の女
- 公爵夫人と化粧品の広告
- 年上の女
- 時の泡の消えぬうちに
- マルセル・Cの人生
- スポーツ・レディとグラマー
- 20年代の女・30年代の女
- あとがき
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