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AUTUMN BROWN 秋のきもの:伊東茂平デザイン

1960年代ファッション
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AUTUMN BROWN 秋のきもの:伊東茂平デザイン

この記事に紹介するのは「私のきもの」1960年10月(第59輯)に3頁から6頁にかけて特集された「AUTUMN BROWN : 秋のきもの」の4点です。
デザイナーはそれぞれ伊東茂平伊東孝ともに2点ずつ。
写真に添えられた文章は適時、分かりやすい表現に直しています。

特集リード文

ベージュから茶系統が、この秋の流行色になるだろうと、専門家の間で噂されています。なぜなら、この春パリで非常に流行ったからです。もう一つの流行色は、オリーヴに似た黄土色ですが、茶系統の方が若々しいし、日本人に似合いやすい色だと思ったので、この系統を選んでみました。茶系統といっても、黒茶よりも枯葉色の方が好ましいのです。

出典「私のきもの」1960年10月(第59輯)

特集リード文批評

春にパリで流行った流行色が日本では秋に流行るという半年ズレ。
枯葉色の服が日本の秋に似合う点は感覚的にわかりますが、類似色が春のパリで流行ったとなると、そちらを知りたくなりました。
落葉色に染まった服が春のパリにどう映えていたのか。

ペプラムとブルゾンのツーピース(伊東茂平デザイン)

伊東茂平のデザインしたペプラムとブルゾンのツーピース

「私のきもの」1960年10月(第59輯)、3頁。

形式的にはスーツですが、ペプラムの上にブルゾンを入れて、ツーピースの柔らかい感じを与えたものです。用尺W巾2メートル(生地・レナウン)カメラ:稲村隆正、帽子:平田暁生、椅子:青山南町寿屋。

出典「私のきもの」1960年10月(第59輯)、3頁

作品批評・リード文批評

スーツだけですと地味な色で終わってしまいますが、モデルの上目遣いとともにフェルト帽が黄土色で明るめになっているため、颯爽とした感じが伝わります。
当時の流行の一つ、大きなボタンが1個しかなく、ブルゾンのウエストをリボン風に結ぶ設計がおしゃれ。

ワンピース風ツーピース(伊東孝デザイン)

伊東孝のデザインしたワンピース風ツーピース

「私のきもの」1960年10月(第59輯)、4頁。

ドレスにもツーピースにも見える合の子が、この頃の新しい感覚とされています。ですから、どっちに作っても差支えありませんが、これは着る人の便利さを考えて、ツーピースに仕立てました。ぼんやりと織方で経縞(縦縞)を感じさせる新しいきれ地です。ドレスにも通用するところが狙いなので、非常に便利なきものだと思います。(生地・レナウン)

出典「私のきもの」1960年10月(第59輯)、4頁

作品批評・リード文批評

いわゆる「合の子」は二つ(二人)の間の子供なので喩が間違っています。
ドレスとツーピースを分けて二択として述べる以上、ドレスはワンピースと理解されているはず。ですので、ドレスかツーピースかとして使われているので、ドレスとツーピースの混合物という意味で「合の子」が使われている訳ではありません。
この作品がツーピースだとすると、被り物の上衣の裾はスカートに入れているのでしょうか。凝ってますね。脇下から胸ダーツを確認できますが、この効果が分かりません。

ドレス(伊東茂平デザイン)

伊東茂平のデザインしたドレス

「私のきもの」1960年10月(第59輯)、5頁。

ベージュに近い枯葉色。共色で荒いチェックが織出されているところに、面白味のあるきれ地。若い人のためのおしゃれなドレスで、小さな帽子がこのドレスに新しいムードを与えていると思います。肩あげのような肩と脇縫目のないスカートのパネル線が、プレーンな中のアクセントです。(生地・レナウン)。

出典「私のきもの」1960年10月(第59輯)、5頁

作品批評・リード文批評

帽子がデザイン・ポイントで重要とのことで、もう少し強調して良いかと思います。
プレーンな全体にスカートの縫目を太ももの前に持ってきているのは面白いのですが、逆にプレーンさを強調しているように思うのは私だけか…。

ルーズ・フィットのツーピース(伊東孝デザイン)

伊東孝のデザインしたルーズ・フィットのツーピース

「私のきもの」1960年10月(第59輯)、6頁。

典型的なベージュ色です。太糸の七子織で、きれ地に厚味があって柔らかいという特徴があります。それを利用して手前にウエスト・ダーツのないデザインをしてみました。脇縫目を前に移動して、前身に横の切替を二段入れたので、前が凹んでいながら平面な感じを強調することができたと思います。これが潰されたようなルーズ・フィットの特徴なのです。用尺2メートル(生地・レナウン)。

出典「私のきもの」1960年10月(第59輯)、6頁

作品批評・リード文批評

前が凹むのは設計段階でのことかと思います。
ジャケットのウエストに広がりを持たせいるので前が凹むのでしょうが、横切替を入れなかった場合にどうなるのか気になりました。
モデルの胸衣に左右されることですが、凹んでいてもカッコいいように思います。とりあえず一番出ているはずの胸部と一番凹んでいるはずのウエストに1本ずつ切替を入れた点が斬新といったところでしょうか。
フェルト帽の色がスーツに合っていて、またスリムなのでいいですね。

全体の批評

4作品とも色合いとデザインが良いと思います。
一つ気になるのは、何もこの特集に限った事ではありませんが、このようなドレスやスーツとインテリアがかみ合っていないということです。昔から思う根本的な問題です。
日本にこんな衣装の担うインテリアが家の中にあるかのようなセッティングは、やはりちぐはぐな感じがします。レストランやパーティ会場で撮影するコストを節約したのか、あるいは家の中でもこんなドレスやスーツを着ましょうという淡い夢を抱かせるためか、謎です。

1960年代ファッション
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いろんなファッション歴史の本を読んで何も学べなかった残念なファッション歴史家。パンチのあるファッションの世界史をまとめようと思いながら早20年。2018年問題で仕事が激減したいま、どなたでもモチベーションや頑張るきっかけをください。

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