本書はニットの女王やニットウェアの女王といわれるファッション・デザイナー、ソニア・リキエル自身が書いたパリのエッセイです。
パリと知性へのリスペクト
本書の帯にはソニアのパリへの愛が強く書かれています。
パリを愛し、パリに生きるソニア
とっておきの、パリ
本当のパリのエスプリ!!
今なお斬新なファッションを発表し続けるデザイナー、ソニア・リキエル初のフォトエッセイ!
『ソニア・リキエルのパリ散歩』の構成
本書は読みやすい構成で、左ページに1テーマのエッセイが記され、右ページに関連写真が載せられています。
たとえば74頁・75頁のエッフェル塔「la Tour Eiffel」では左ページ上にエッフェル塔の詩的なエッセイ。下にエッフェル塔のイラスト、右ページにはエッフェル塔から見下ろした地面の写真が配置されています。
本書のテーマ
冒頭はソニア自身がスケッチしたパリの地図。
セーヌ川をはさむ上下の街路や街区に色鉛筆とペンでオススメのホテルや美術館などを記しています。
写真にはソニアの作品はなく、パリの街路や建築物、ソニアの好きな文具や雑貨、そしてパリで販売されている食料品やデザートなどです。
本書を妻が見て最も多く口走ったのは「美味しそう!」でした。
ソニアの作品はイラストとして数ページだけ載っています。どれも色鉛筆で描いた可愛いもの。
本書の内容
matin 朝
- コレット
- 小説
- 知識
- 創造
- 旅立ち
- 魅惑
- 追憶
- 花束
- ジョルジュ・サンド
- 右岸・左岸
- 薔薇
- ル・ジュール・エ・ルゥール
- 散歩
midi 昼
- デジュネ
- 科学
- デパート
- 音楽
- 色のシンフォニー
- テーブルの楽しみ
- 秘密の庭
- ご馳走
- アート・ギャラリー
- 最初の恋人
- サン・ジェルマン・デ・プレ
- 写真
- 夢中
- 喜び
- 食いしん坊
- モードとデモード
soir 晩
- エッフェル塔
- 香り
- 左岸
- セーヌ河
- 芸術と銀製品
- ボーテ
- 全身全霊
- 映画へのパッション
- 葉巻(シガー)の味
- 演技
- アドレス帳(本書に掲載された食品や画材などの販売店住所)
- 訳注、訳者あとがき
「訳者あとがき」にはソニアのパリへの思いがまとめられています。
リキエルは、パリをこよなく愛している。その中でも特に、彼女が暮らしクリエーションの場としてるサン・ジェルマン・デ・プレに対する思いは強い。彼女がサン・ジェルマン・デ・プレに引っ越したのは、68年にグルネル通りに最初のブティック<ソニア・リキエル>を持ったときのことだった。彼女はよくこう言っている。昔からサン・ジェルマンに住みたかった。知識人や、アーティストがいて、音楽、建築、文学、絵画……、そして知性があるところだから、と。ソニア・リキエル『ソニア・リキエルのパリ散歩』小椋三嘉訳、集英社、2000年、106頁)
感想
サン・ジェルマンへのソニアの愛は知性の集まる場所だという根拠がわかります。
現代のガブリエル・シャネルと呼ばれる所以は知名度よりも、知性をリスペクとするこの思いが一致しているからかと思います。
それに関わり、ソニアの記すエッセイの水準の高さに目を見張りました。フランスの詩人、思想家、批評家などの文章を引用したり、自分自身の言葉を散りばめたり。
ソニアはボードレールやマルグリット・デュラス、それにサルトル、ボーボワール、ロラン・バルトを読んできたんですね。
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