マタ・ハリ:概要
マタ・ハリ Mata Hari は、ジョージ・フィッツモーリス George Fitzmaurice 監督、ギルバート・エイドリアン Gilbert Adrian 衣装、グレタ・ガルボ Greta Garbo 主演の映画です。 1932年にアメリカで公開されました。(MATA HARI is the film starring Greta Garbo. It was published in the United States in 1932. This film was directed by George Fitzmaurice, and Grabo’s Costumes were designed by Gilbert Adrian. #matahari #gretagarbo #gilbertadrian)

ジョージ・フィッツモーリス監督『マタ・ハリ』ギルバート・エイドリアン衣装、グレタ・ガルボ主演(アメリカ、1932年) via HazyBaby Miniatures: Greta Garbo as Mata Hari (1931)
パラマウント映画社が公開したマレーネ・ディートリッヒのスパイ映画「間諜X27号」(1931年公開)に対抗して、メトロ・ゴールドウィン・メイヤー社(MGM)はグレタ・ガルボ主演のスパイ映画「マタ・ハリ」を同年に公開しました。「間諜X27号」は街の女がオーストリア諜報部に拾われてスパイにさせられたましたが、「マタ・ハリ」は冒頭からプロフェッショナルで高名な大スパイとして登場します。いずれも、恋に身を焼き尽くして悲哀に終わる点で共通しています。
「マタ・ハリ」主演のグレタ・ガルボは、北欧スウェーデン出身の美女として、冷たい顔を買われてアメリカのハリウッド映画界で特異の地位を占めました。彼女の役柄はつねに神秘的で、端麗かつ静かで、悲劇的でもありました。ダンサーかつスパイのマタ・ハリは、スパイ映画としても悲恋映画としても十分に彼女を引き立てました。
物語
パリで人気絶頂のダンサー、マタ・ハリは中央同盟国(同盟国)側ドイツ政府のスパイ(間謀)でした。上司たる情報部長アンドリアーニ(表面的にはパビリオン・オーナー/ルイス・ストーン演)から命令を受け、マタ・ハリは、ロシア陸軍将校アレクシス・ロサノフ(ラモン・ノヴァロ)に接近し、密書を手に入れました。彼女の計画で、ロサノフは飛行機でロシアヘ逃亡中に撃墜され、一命はとりとめたが失明しました。
そのことを上司アンドリアーニから聞いた時、マタ・ハリに初めて女が目覚めました。ロサノフヘ激しい恋が噴き出す一方で、それを上司に咎められ、ロサノフを射殺せよと命じられます。しかし、マタ・ハリにはそれはできない状況にありました。すぐさまロサノフの入院する病院へ駆けつけた彼女は、ロサノフに対しファースト・ネームのアレクシスと呼びます。この時、マタ・ハリは、スパイという職業や過去の行為を全て棄てて、アレクシスへの愛を誓います。
しかし、ロシアの陸軍武官シュビン(ライオネル・バリモア)を銃殺していたマタ・ハリは、軍事法廷でライフル銃による処刑を宣告されます。服罪中の彼女は、教会シスターや弁護士 Maj. Caron (アレック・B・フランシス演)らに協力してもらい、盲目のアレクシスに刑務所を病院と思い込ませて、短い別れの一時を過ごします。そして、フランス処刑隊に連れられ処刑場へ消えていきました。
ギルバート・エイドリアンの工夫
映画のほとんどの場面で、グレタ・ガルボは髪をアップにして、ほとんど見せません。それもあって、顔や体格に目が行ってしまう効果が強まります。グレタ・ガルボは、冒頭のダンス場面で薄めのガウンを着ています。それはゆったりしていて、裾を長く曳いています。たまに露出される脚は実際以上に長く見え、ギルバート・エイドリアンは主に太腿を強調することで肉感を出させました。
その後の場面では、下半身にゆとりを持たせ、上半身はボディ・コンシャスに仕立てたロング・ドレスをいくつか着ています。それらのドレスは衿元・胸元が大きく開いているので、露出した片方の肩に目が行ってしまいます。ギルバート・エイドリアンはグレタ・ガルボの広い肩と高い鼻を同時に目立たせることで、かなり際立った表現をさせた訳です。
ドレスの多くは背中を丸出しにしたもので、マタ・ハリの仕事面での意志の強さがエロスと重なって迫ってきます。また、顔全体に注目させる時は、襟を立てた巨大なコートを着せました。
太腿の重視や背中の露出とか、あれこれ分析しながらも、私は次のタイト・スーツに心と眼が奪われました…。

ジョージ・フィッツモーリス監督『マタ・ハリ』ギルバート・エイドリアン衣装、グレタ・ガルボ主演(アメリカ、1932年) via Mata Hari
このスーツは肩から背中にかけて切り込みが強く、後からみれば露出が高いのですが、この映画の中では比較的露出度が低い衣装です。ワンピースかツーピースかも分かりにくいのですが、二の腕辺りには大きくゆとりを持たせていて、上半身と下半身のバランスを上手に取ろうとしたエイドリアンの工夫の一つだと感じます。下半身部分の素材がレザー(本革)なのかどうかも判断が付きかねますが、膝下には横にストライプを入れている効果について、縦縞だったら後方のスカート状の布と脚が反発しあうからかと想像します。
スタッフ
- 監督:ジョージ・フィッツモーリス George Fitzmaurice
- 衣装:ギルバート・エイドリアン Gilbert Adrian
- 衣装提供:エフゲニ・ヨゼフ Eugene Joseff(衣装用ジュエリー)
- 美術監督:ジョージ・フィッツモーリス George Fitzmaurice, アレクサンダー・トルボフ Alexander Toluboff
- 撮影:ウイリアム・H・ダニエルス:William H. Daniels
- 脚本:ベソジャミン・グレーザー Benjamin Glazer, レオ・ビリンスキー Leo Birinsky (as Leo Birinski)
ジョージ・フィッツモーリス監督『マタ・ハリ』ギルバート・エイドリアン衣装、グレタ・ガルボ主演(アメリカ、1932年)
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なお、マタハリの伝記は次の本が詳しいので、とても参考になります。
マッシモ・グリッランディ「マタハリ」秋本典子訳、中央公論社、1989年
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